拾われサンタ、恋をする


本心では直接謝りたいところを、つながらないから仕方なくメールで誠心誠意伝えたつもりだ。


よし、時間までもう一眠りするか。


……と思えたらどんなによかったか。


「仕事中かな……?」


待っても待っても、亜紀さんから返事はなかった。


ドタキャンよりも性質が悪い僕のすっぽかしで、完全に頭に血が上っているんだろうか。


あんなに愛想がいい亜紀さんが?怒らせたら別人みたいになっちゃうのか?


不安になって確かめたくても不在着信になるし、共通の知人と言えば優衣ちゃんと須藤教授しかいない。


意味なく立ち上がってわしゃわしゃ頭を掻いている自分は、よっぽど余裕を失っているんだと思う。


「……こんな精神状態でどうやって夜まで過ごせばいいの」


家の中にいたら時間は果てしなく長くなってしまう。


僕は手早く洗顔と着替えをすませて、約束まで外で時間を潰すことにした。







一人映画が平気なタイプ。


まさにそれは自分のことだと思う。


他人に付き合って興味もない映画を見せられるより、本当に自分が観たいものをじっくり鑑賞できた方がいい。


紗理奈と交際していたころ、超甘口の恋愛映画を観に行くのが恥ずかしくてたまらなかった。


その日、好きなスパイ映画の最新作が終わったのは十二時半だ。


昼休みには気付いて折り返し連絡をくれるはずだと期待していたのに、時計の針が十三時を指した瞬間打ち砕かれた思いがした。


「お兄さん一人?すぐそこだけど休憩していかない?」


派手な印刷のポケットティッシュを手渡してきた人が、ニヤニヤと声を掛けてくる。


「そういうの普段から無理なんですけど、今は本っっっっ当に無理です」


「暗い顔してんじゃん。気分転換していけばー?」


「……それで気分変わるんだったらこんなに悩んでないですから」


ティッシュはありがたく受け取っておきつつ、丁重にお断りを入れた。

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