拾われサンタ、恋をする
包装の分、更に大きさを増したクマは、中身が見えなくても十分目立っていた。
車で運べば簡単だろう、でも学生の身分で車を入手する金と維持費が用意できない。
彼女もそこはわかっているはずなのに、こんな無茶なことをさせる。
困らせたいのか、それともとことん性格が曲がっているのか……
周囲の視線は痛かったが、警察に声を掛けられなければセーフだという自分なりのルールを決めて歩いた。
彼女のアパートに近づいた時、一度電話をかけてみた。
続く呼び出し音。
「……寝てんのかな」
自分はとことん考え方が甘いと、後になって思ったことだ。
ヒスを起こして彼女が出ていくことに慣れていたし、暴言にも耐性がついていたから。
家でくつろいでいる彼女に会えるはずだと、その一本しか答えを出せなかった。
家の前について、今度は呼び鈴を鳴らす。
―――無反応
「……あれ?」
もう一度彼女の携帯に掛けてみるも、家の中から呼び出し音は聞こえない。
「留守、か?」
じわじわ焦りがわく。
もう夜の九時を過ぎている。
絶対買ってきてと言っていたはずだよな。
クリスマスは一緒に過ごすつもりだったよな。
「おい、いないのか?紗理奈?」
リダイアルが六回目を数えたとき、僕の手はダランと落ちた。