拾われサンタ、恋をする
優衣ちゃんの小さな背中についていった先で、横たわる彼女を見つけたとき、大人の僕ですら言葉を失った。
小さなお昼寝布団。
そこからは優衣ちゃんが寝ていたところだけが空っぽになっている。
「亜紀さん!亜紀さん聞こえる?」
声をかけたら亜紀さんが薄く目を開けた。
喋る力がないのか、彼女の口から返事はなく、唇を少しだけ動かしながら浅くて速い呼吸を繰り返している。
「ちょっとごめんね」
脈を見ようと喉元に触れたら、亜紀さんの体の熱さがすぐにわかった。
脈も弱くて速い。
「これは…………優衣ちゃん、氷とか冷たいシートある?」
「ぺったん?」
「そうそれ、探して持って来てほしいんだ」
「うん」
「ありがとう、賢い」
優衣ちゃんのおでこに当てるジェスチャーのおかげで、意思の疎通はバッチリだ。
僕は亜紀さんの膝の下に手を回して体を持ち上げ、寝室へと運ぶ。
力の弱い僕でも簡単に持ち上がってしまう彼女の体が、ますます頼りなく思えてつらい。
「よしひろ君あったよー」
「ありがとう」
優衣ちゃんから受け取ったそれを、額と首の後ろに貼ってやると、亜紀さんが顔をしかめて反応した。
「亜紀さん、水は飲めそう?」
水分を取らせようと確認してみるも、亜紀さんが僅かに首を横に振った。
こうなったらと僕も腹を括る。
「優衣ちゃん。ママね、風邪がひどくなってしまったみたいなんだ。おうちにいても治療はできないから、病院に連れていこう」
「……よしひろ君が行くの?」
「僕と優衣ちゃんとで連れていくよ。お手伝いできる?」
「うん、ママ元気になってほしい」
涙目のまま力強く答えた優衣ちゃんの頭を撫でて、その勇気を称える。
「じゃあ車を呼ぶからね。救急車、わかるね?少しおうちの中がバタバタするけど、ママを一番安全に運んでくれるから安心して」
優衣ちゃんに声をかけながら、すぐに番号を発信した。
救急隊員に住所や現在の症状を説明している間、もう片方の手でずっと優衣ちゃんを抱きしめていた。