拾われサンタ、恋をする
「よし、じゃあ次は優衣ちゃんだ。お外に行くときに着る服と靴下を探してくること」
「優衣できる」
そう言って優衣ちゃんが僕の腕から離れた。
あんなに小さな子供でも戦う顔ができるのかと、ちょっと感動してしまう。
次に僕は須藤教授に電話をかけた。
『もしもし、南か?』
「須藤先生、突然すみません。あの……落ち着いて聞いてくださいね」
『めずらしく慌ててどうした。用件は?』
「今ですね……娘さん、亜紀さんが自宅で倒れていて意識が朦朧としている状態なんです」
『……何を言ってるんだ?亜紀の所にいると言いたいのか?』
そこを説明する時間はないので、僕はとりあえず先を急いだ。
「亜紀さん、今年に入ってから風邪を引いてましたよね。もしかしたら拗らせたのかも。今、呼吸は速めですがしっかりしています。熱が高くて頻脈。脱水を起こしてるかもしれない」
『ちょっ、待ってくれ!それは……それは本当の話なのか』
「はい、さっき救急車を呼びました。亜紀さんのかかりつけの病院を教えてください」
『……県立藤沢病院だ』
「わかりました。病院決まったらすぐにご連絡します」
『優衣はそこいるのか?』
「優衣ちゃんは無事ですよ。僕が来たとき外で泣いて助けを求めてたんです」
言いながら、光景を思い出して泣きそうになる。
でもそれは今じゃない。
「僕が責任もって一緒に連れていきますから、安心してください。亜紀さん、アレルギーや常用薬あります?」
『どちらもないんだが……南』
「はい」
『すまん、二人を頼む。俺もすぐに行くから、それまでどうか……!』
「わかってます、大丈夫。どうか落ち着いて来てください。おじいさんの顔を見たら、優衣ちゃんもほっとすると思いますよ」
電話を切ってポケットにつっこんだら、モコモコの上着を着た優衣ちゃんがそばにやってきた。