拾われサンタ、恋をする
「行くよ、優衣ちゃん。病院に着いたらおじいちゃんとおばあちゃんが来てくれるからね」
「ママ治る?」
「もちろん」
この子に自分で歩かせるのが酷に思えて、僕は優衣ちゃんを抱えたまま移動した。
鍵の置場所を把握していて教えてくれた優衣ちゃんのおかげで、戸締まりは完璧だ。
車内に乗り込んですぐ、酸素濃度がさがっていた亜紀さんに酸素マスクがつけられる。
「県立藤沢病院がかかり付けです」
「そこなら救急病院ですね。受け入れ可能か連絡してみます」
隊員が病院に連絡を入れてからほどなくして、要請を受けると返事をもらった。
僕は片手に待機していた携帯で、すぐに教授に電話をかける。
一方の教授も、待ってましたと言わんばかりの速さで電話がつながった。
『南?どうなってる?』
「藤沢病院で受け入れてもらえるそうです。今から車出ます」
『俺は大学出るところだ。女房連れてすぐいくから、もう少しふんばってくれよ!』
手短に電話を済ませて、少し揺れる車内で優衣ちゃんと一緒に亜紀さんの手を握った。
白くて細い手―――こんな力のない手で頑張りすぎだよ。
「亜紀さん、病院行こうね」
「ママ頑張れ!」
優衣ちゃんと一緒に何度も何度も声をかけた。
*
病院について肺炎と脱水を起こしていることが分かり、点滴加療が始まった。
処置室外の椅子に腰かけて優衣ちゃんと待っていたところに、須藤教授夫妻がやってきた。
「じいじ!ばあば!」
「優衣!大変だったわね」
おばあちゃんに抱きついた瞬間、優衣ちゃんの涙が溢れた。
ここまでずっと我慢していたのだろう。
それを見ている教授の肩も上下していた。
「それで、亜紀は?」
「今は眠ってます。肺炎起こしてたみたいで、それと酷く疲れていたんじゃないかっていう話でした」
「そうか……ずいぶん面倒をかけたな」
「いえ、僕は何も」