拾われサンタ、恋をする


「行くよ、優衣ちゃん。病院に着いたらおじいちゃんとおばあちゃんが来てくれるからね」


「ママ治る?」


「もちろん」


この子に自分で歩かせるのが酷に思えて、僕は優衣ちゃんを抱えたまま移動した。


鍵の置場所を把握していて教えてくれた優衣ちゃんのおかげで、戸締まりは完璧だ。


車内に乗り込んですぐ、酸素濃度がさがっていた亜紀さんに酸素マスクがつけられる。


「県立藤沢病院がかかり付けです」


「そこなら救急病院ですね。受け入れ可能か連絡してみます」


隊員が病院に連絡を入れてからほどなくして、要請を受けると返事をもらった。


僕は片手に待機していた携帯で、すぐに教授に電話をかける。 


一方の教授も、待ってましたと言わんばかりの速さで電話がつながった。


『南?どうなってる?』


「藤沢病院で受け入れてもらえるそうです。今から車出ます」


『俺は大学出るところだ。女房連れてすぐいくから、もう少しふんばってくれよ!』


手短に電話を済ませて、少し揺れる車内で優衣ちゃんと一緒に亜紀さんの手を握った。


白くて細い手―――こんな力のない手で頑張りすぎだよ。


「亜紀さん、病院行こうね」


「ママ頑張れ!」


優衣ちゃんと一緒に何度も何度も声をかけた。








病院について肺炎と脱水を起こしていることが分かり、点滴加療が始まった。


処置室外の椅子に腰かけて優衣ちゃんと待っていたところに、須藤教授夫妻がやってきた。


「じいじ!ばあば!」


「優衣!大変だったわね」


おばあちゃんに抱きついた瞬間、優衣ちゃんの涙が溢れた。


ここまでずっと我慢していたのだろう。


それを見ている教授の肩も上下していた。


「それで、亜紀は?」


「今は眠ってます。肺炎起こしてたみたいで、それと酷く疲れていたんじゃないかっていう話でした」


「そうか……ずいぶん面倒をかけたな」


「いえ、僕は何も」


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