拾われサンタ、恋をする
たぶん須藤教授は僕がなぜ亜紀さんの家にいたのかも疑問に思っているはずだ。
でも今経緯を話すには時間がなさすぎる。
「亜紀さんに会ってきてあげてください。病状の説明もあると思いますし、僕はここで優衣ちゃん見てますから」
「すまんな、南」
呼ぶと、優衣ちゃんはおばあちゃんの腕から僕のところに戻ってきた。
ヨジヨジと僕の膝に座ってくる優衣ちゃんを、二人とも驚いた表情で見つめている。
いやもう、気まずいったら。
後でちゃんと説明するから、ここは流してほしい。
「……どうぞ」
僕が手で処置室へ入るよう促したら、須藤教授から中へ入った。
後から入った奥さんがドアを半分開けていってくれた。
優衣ちゃんがいつでも中に入ってこられるようにと、気遣ってくれたんだと思う。
「亜紀……もう、無茶するから」
眠る娘をみて涙ぐむ母と、その二人を見て沈痛な面持ちで立っている須藤教授。
こういうのは見ているだけで胸が痛い。
「ばあば泣いてる」
「うん……ママに会えてホッとしたんじゃないかな」
優衣ちゃんは目元に溜まったままの涙を、手の甲で拭った。
「優衣は一番に泣くのやめる」
「はは……っそういえば一番始めに泣いてたのも優衣ちゃんだもんね」
「いじわる言わないでー」
優衣ちゃんが僕の頬をつねろうとするので、ガバリと身長差をいかして覆い被さった。
「偉かったね、優衣ちゃんが外に出て教えてくれたからママは助かったんだ。よく頑張った。ありがとう」
「えへへ」
つたない言葉のくせに、どや顔だけは一丁前。
不安でいっぱいだった優衣ちゃんの心が、穏やかになってよかった。
「優衣ちゃん、これ。渡しておくね。約束してたきびだんごだよ」
「ほんもの!」
優衣ちゃんは、いたく感激してくれた。
桃太郎の絵柄入りのパッケージを選んだから、分かりやすかったみたいだ。
「後でおじいちゃん達と食べてね。それから、これはママに。ママが元気になったら渡してあげて」
「うん」
僕の鞄に入ってしまう大きさでも、優衣ちゃんが持つと大荷物になる。
それでも大切そうに抱えてくれた。