拾われサンタ、恋をする
「優衣がなついているから、親しい仲なのかと思ってだな」
「いえ。優衣ちゃんと会うのは……まだ二回目なんですよ」
頭の中でクリスマスの分は差し引いて答える。
隠さなければならない所は貫かなくては。
「そうか。それなら益々申し訳なかった。救急で人を運ぶなんて、どんなに大人でも疲れることだからな」
「そうですかね。今は気を張ってるので、後でくるのかな」
「南の冷静さが際立った場面だった。発見者が上本か大西だったら大騒ぎになっていただろうと思うよ」
「それ……ちょっとコメントしづらいですけども」
教授が笑いながら、優衣ちゃんの頭をぐりぐりと撫でた。
「優衣、ママはもうちょっとお休みが必要なんだそうだ。お医者さんの言うこと聞いて元気になってもらわんとな」
「優衣ここにいるの?」
「ん?優衣はじいじの家に一緒に帰ろう。ママはお泊りだから」
「だめだよ。ママ一人になるよ」
「………」
この優衣ちゃんの言葉を、僕はこの先絶対忘れないと思う。
母一人、子一人の生活の中で、優衣ちゃんは優衣ちゃんなりに一生懸命お母さんを支えているんだと分かる一言だった。
教授が優衣ちゃんを抱き上げ、一緒に亜紀さんの寝顔を見ながら言った。
「じゃあママが寂しくないように、みんなで毎日会いに来ような。優衣は折り紙が得意だろう。何か作って持ってきてやったらどうだ?」
「金魚さん作れるよ」
「よし、じいじにも教えてくれ。一緒にいっぱい作ろう」
ベッドサイドが金魚だらけになるのもどうかと思うけど……
この家族から前向きな発言が出てくることに、僕自身が安心をもらう。
「薬が効いて早く良くなるといいですね」
「まあな。亜紀はもともと元気な奴だからな、すぐ治るさ。治ったらまたおかしなことをしでかすぞ」
「あー……」
須藤教授の部屋を間違えて、違う先生の部屋に侵入しようとする亜紀さんを思い出して、ふっと笑いが漏れる。