拾われサンタ、恋をする
サンタ、認識する
亜紀さんが救急にかかった日の夜、僕が家に着いてしばらくしてからだろうか。
須藤教授から電話で彼女が目を覚ましたと連絡があった。
若くて体力もあることだし、しっかり治療をして休めば大丈夫だと説明があったらしい。
あとはご家族での問題になるだろうし、僕から特に踏み込んだことは訊かなかった。
確認するまでもなく、しばらく教授は休みを取るだろうと思っていたのに……須藤教授は二日後には何事もなかったかのように大学に現れた。
「おは、よう、ございます……?」
「はは。南にそういう顔をされると、やってやったぞという気分になるな」
「いやいや、だって。まだ落ち着いてないでしょう」
「うちの女房は仕事が早いからな。亜紀の入院生活はもう落ち着いているんだ。そうなると車の運転しか能がない俺は邪魔になるらしい」
それって奥さんを自慢したいんだか、自分を蔑んでいるだけなんだか。
「ちょうど南を呼びに行こうと思っていた所だったんだ。ちょっと俺の部屋に来てくれるか?」
「いつですか」
「かわいくない奴だな。今だよ今」
個人的に呼び出される時というのは、大抵が面倒くさい仕事を押し付けられるので、警戒してしまうのは自然な反応だと思う。
やけにワクワクしている教授に胡散臭いなあと思いながら、諦めて教授室まで付いて行った。
まさか病気の亜紀さんの代わりに、掃除をさせられるのではあるまいな。
「ほらほら、ノックしてみろ」
「いやです」
「なぜだ。なぜお前は素直に俺の言うことを聞かない」
親父のそういう絡みは本当にイラっとする。
これ以上ヘソを曲げられても困るので、僕は控えめにドアをコンコンと叩いた。
「……しましたけど、何がどうなるんですか」
「しまった、ノックに対する応対をまだ教えていなかった……。もういい、入れ」
「失礼します」
中に入ってみると、窓際にツインテールに結った女の子の後姿があった。