拾われサンタ、恋をする
「……優衣ちゃん!」
「あ!よしひろ君だあー!」
無邪気に駆け寄ってくるその子が可愛すぎる。
突進される前にひょいとすくい上げると、一番高い所できゃっきゃと笑う声がした。
「元気にしてた?」
「うん!」
「きびだんご食べた?」
「うん!おいしかった!あのねー、じいじを仲間にしてあげたの」
「仲間……って、ああ」
お供にされたのか、じいじ!と、それに気付いた瞬間こみ上げるものを我慢できなかった。
「笑ってくれるな。俺はお前のせいで鬼退治までの一連の流れに付き合わされたんだぞ」
「なんだ、ちゃんと役に立ってるじゃないですか」
この小さな桃太郎は、すごい力の持ち主なのだから仕方がない。
「面会時間まで暇をしてるんだ。保育科で遊べる所があるらしいから、事情を言ってお願いしようと思ってるんだが、それまで一緒にいてやってくれないか」
「いいですけど、教授は一緒にいなくていいんですか?二人でいることなんて滅多にないはずでしょう?」
「俺はあれだ、世話をするのに慣れてないんだ」
「そんなの慣れるも何も」
「だってお前、どうするんだよ!いきなりトイレとか言われたら!今日だってパンツの替えまで渡されてハラハラしてるんだよ!」
「ちょっと、先生」
僕が目配せをしたら、教授はぴたっと口を閉じた。
そういう話を優衣ちゃん本人の前でする時点でデリカシーないですわ、アナタ。
「大丈夫だからね。困ったことがあったら僕に何でも言えばいいよ」
「優衣よしひろ君がいい」
孫にふられたじいじは悔しそうにジト目で睨んでくる。
「そういうお前はどうして小さい子供に慣れているんだ。完全に専門外じゃないか」
「年下の面倒はある程度見慣れてますよ。田舎の学校で人数少なかったから、縦割りの活動が多かったですしね。優衣ちゃんほど懐いてくれる子も珍しいですけど」
首に巻きついている優衣ちゃんを持ち上げて、ふわんふわんと上下させると、新しい乗り物でも見つけたかのように優衣ちゃんがはしゃいだ声を上げた。