拾われサンタ、恋をする
「普段は愛想のかけらもない南がなあ……」
「何が言いたいんですか」
今度は僕の方が睨む番だ。
亜紀さんの容体はその後すぐに落ち着いて、抗生剤での治療のおかげで昨晩からは熱も出ていないとのことだった。
優衣ちゃんもママがいなくて寂しい思いをしていることだし、このまま順調に回復してくれたら何よりだ。
「亜紀さん、退院後に無理しなければいいですけどね」
「それなんだよ」
その話を振った途端、須藤教授が顔をしかめた。
「体力も落ちているだろうから、家族としては一カ月くらいは静養して欲しいんだが、亜紀は一刻も早く仕事に戻りたいらしくてな」
「そんなに休みを取りにくい仕事なんですか」
「というよりは亜紀自身の気持ちの問題だろうな。幼児抱えての就職活動でかなり苦労して、ようやく決まった仕事なんだよ。少しでも迷惑を掛けたくないというのが本音だろう」
「そうだったんですね。世知辛いもんだな」
アルバイトにしてもそう。
乳幼児がいる人が面接に来ると、子供の体調などで突然休まれては困るからとはねられる。
雇う側としてはできるだけ自由がきく人を入れたいからだ。
ましてやひとり親の亜紀さんの立場では、風当たりが強いのは当然だろう。
「会社に菓子折り持って頭下げに行ってみようかと思ってるんだが、亜紀は怒ると思うか」
「教授が直接ですか?」
「んー、だってなあ。本当のところは隠して出勤しそうじゃないかアイツ」
完治していないのに、もう万全ですから行かせてください!と言ってそうな気も、しないでもない。
「病院で診断書を書いてもらったらどうでしょう。担当医にお願いして、少し休養が必要とでも書き添えてもらうとか。こういう時は論より証拠ですよ」
「お、それはいいな」
「あとは先生が亜紀さんに怒られてください」
「……俺に人身御供になれと」
「必要な犠牲だと思って諦めましょう」
どうせ俺はそういう役回りばっかりだよ、とごま塩頭の親父が拗ねた。