拾われサンタ、恋をする
――――亜紀が南に会いたがっていたぞ
優衣ちゃんと別れ際、教授から聞かされた情報に正直いうと戸惑った。
ほぼ初対面の僕なんかに、あんなに弱ったところを見られて、亜紀さん的にどう思っているのかな、なんて。
余計な心配と言えばそうだけど相手は女性だし、男同士のノリで「いやあーすまんすまん」で終われる話じゃないだろう。
退院したら連絡してみようかと考えていたのに、退院後は実家の方に帰る予定だという。
それは益々会いにくい。
「……行くか」
そう心を決めてからまだ二日悩んで会いに行く辺り、自分でも情けない臆病さだ。
休日に手ぶらで行くのも気が引けて、入院中に読めそうな本を二冊購入して見舞いに行った。
亜紀さんは入院したその日の病室のままだった。
咳がひどいので、個室の方が落ち着くかららしい。
部屋の前に着いてもソワソワして落ち着かない。
何が起こるのか分からないときに、僕はこんな気分になる。
深呼吸を二つ。
意を決してノックしてみたが、返事はなかった。
「失礼します……」
静かにドアを開けて正解だった。
冬の柔らかい陽光の中で亜紀さんは静かに眠っていたのだ。
腕には点滴がつながっている。
熱も出なくなったとは聞いていたけれど、強い薬を用いての治療で体も疲れているのだろう。
部屋に入ってしばらく立ちすくんでいたけれど、亜紀さんは目覚めそうもないのでベッドサイドにある椅子に腰かけた。
「んー………」
亜紀さんが細い声を出す。
目が覚めたというわけではなく、何か夢でも見ているのだろう。
倒れていたあの日に比べて顔色もよく、とても穏やかな表情でいることに安堵する。
起きないよな?と思いながら、布団の上に投げ出された手をそっと触ってみた。
――――温かい……
ほっとしてため息を吐いたと同時に、自分は眠っている女性に対して何をしているんだと恥ずかしくなる。
慌てて一旦は手を離したが、そのままにしておくとまた冷たい手に戻ってしまいそうな気がして、布団の中に入れ直した。