拾われサンタ、恋をする
「娘さんに?」
聞き返した僕に、女性は何度も頷いている。
「いいですけど……ぶっちゃけ曰く付きですよ、これ」
「その事情はなんとも……言葉にできないですけど。実は娘がインフルエンザで寝込んでて、今日までにプレゼントを用意できなかったんです」
なるほど。
これをサンタからのプレゼントにしてしまえば、この女性は難を逃れられるというわけだ。
「ぬいぐるみが好きな子なので、喜ぶと思います。あ、でも無理強いはしません!貴方にも気持ちがあることと思いますし……」
「いいえ、構わないですよ」
僕がイエスを出したら、それまで俯きがちだった女性がパッと顔を上げた。
「僕としては、またこれを抱えて帰る方が気持ちが塞ぐってもんです。そちらまでお運びしますね」
「……っ ありがとうございます!助かります!」
感激した様子で何度も頭を下げてくる。
予想外の展開だったが、今の僕にとっては有り難い提案だったのだから、こっちこそお礼を言いたい。
玄関先で受け渡すと、女性は両手を精一杯まわして、それを家の中に運んでいった。
再びドアが並ぶ通路に一人になった僕は、手摺にもたれ掛かって、深い息を吐いた。
もう二度と、ここに来ることはないだろう。
付き合っている時も、紗理奈が気が向いたときだけ、うちに転がり込んで来ることが多く、数えるほどしか来たことはなかったけど。
独り身になって、寂しさと同時に、ホッとしたような感情があるのが切ない。
忙しい生活の中、彼女の我儘に付き合って、一体僕は何を得たというのだろう。