拾われサンタ、恋をする
「おじいさんと一緒だったんですけど、渋滞に巻き込まれたんです。少し遅れて来ると思うので、優衣ちゃんと一緒に待たせてもらってもいいでしょうか」
僕の提案に少し意外そうな表情をした保育士さんは、ちらりと吊り下げ名札を見るや門を開けてくれた。
「もちろんです。優衣ちゃんも安心すると思いますよ。寒いのでどうぞ中へ」
「失礼します」
先導してくれる保育士さんに付いて行った先で、保育園の鞄を肩にかけて靴も履いた状態の優衣ちゃんを見つけた。
もう帰る時間だと、お迎えが来たらすぐに帰ろうと思っていたのだろう。
その気持ちは優衣ちゃんの様子を見ただけで伝わってきて、先に来て正解だったと思った。
「優衣ちゃんお待たせ」
「……よしひろ君!」
いつも通り飛びついてくる優衣ちゃんをふわりと持ち上げる。
そうして腕に座らせた時には、玄関に座っていた時の不安げな顔は消えていた。
「じいじが来ると思った?」
「うん、じいじ遅いなって思った!」
「もうすぐ来るはずだから、それまで一緒に待ってよう。今日は僕もじいじの家に行くことになったんだ」
「ええー!やったぁ!」
優衣ちゃんが首に抱きついてきて、彼女のかぶっているニット帽が頬に当たる感触がこそばゆい。
可愛い可愛い、なんって可愛いんだろうかこの子。
孫の身辺調査を……などと怪しいことを言っていたじーちゃんの気持ちが、今この時は分からなくもない。
保育士さんはニコニコと僕たちのことを見守っていてくれたが、優衣ちゃんがはしゃぐ声が中に聞こえたのか、何人かの園児が玄関に出てきてしまった。
「優衣ちゃん、それ誰ー?」
「よしひろ君だよ」
「いいなー。パパのお迎えいいなぁ」
単純に羨ましがって一人の園児が発した言葉だったが、これが少し事態をややこしくさせることになってしまった。