拾われサンタ、恋をする
帰らなければと思っても、足が動いてくれない。
底冷えする寒さが悪い。
それと、冬の夜の寂しさ。
12月24日、こんな形で一人になった僕は、どれだけ格好悪い奴なんだか。
彼女が待っているから今日だけはと言って、研究室を抜けてきたのに、仲間にする言い訳すら思い付かない。
「最悪な日だな……」
独り言を自分に言って聞かせた。
「よかった、まだいた……!」
横から掛かった、思いの外弾んだ声。
見るとさっき家の中に消えた女性が、封筒を握りしめて出てきていた。
「無理を聞いていただいてありがとうございました!これ、ぬいぐるみのお金です」
「別にいいですよ、買い取ってもらったつもりじゃないですから」
「あのサイズだったら相当高いものでしょう?さすがにタダでは頂けないですし」
「ほんとに、気にしないで」
どうあっても受け取らせるつもりの女性の手を、失礼にならないよう気を付けながら押し返した。
「引き取ってもらえて助かったのはこっちです。それに、お金よりも買って運ぶ勇気の方がダメージでかかったですから」
冗談めかして伝えたら、女性もふっと目元を細めて笑ってくれた。
「だったらせめてお茶でもご馳走させてください」
「え?いやいや、こんな時間にお邪魔できまさん」
「だけどその手、氷みたいですよ」
言われて初めて自分の手を見たら、両手とも動かすのがやっとというくらい冷たくなっていた。
「温まって行ってください。うちは大丈夫ですから」
「ご心配はありがたいですけど……」
「いいじゃないですか、サンタさんって夜に来るものですよ」
優しく笑んで、玄関へ誘導される。
凍えそうだった心に、その気遣いが嬉しかった。