拾われサンタ、恋をする
「亜紀さん……昨日から何かおかしくないですか?」
「元気ですよ、ほんとに」
「そういうことじゃなくて……」
言いたくなさそうだから追及しないでおこうと思ったけれど、目が合うたびに明らかに動揺してるんだから僕も気になってしまうじゃないか。
少し話してみようと思って近づいたら、亜紀さんが身体を強ばらせた。
………こういうのは傷つくなあ。
「もしかして怖い夢でも見たとか」
「……っ!子供じゃないんだから、そんなことで眠れなくなったりしません!」
ムキになって言い返すところが子供なんじゃないのかな、そう心の中で呟く。
亜紀さんの前で少し屈むと、力の入った彼女の手の下にアルバムがあることに気付いた。
見たところ、表紙はまだ新しい。
「優衣ちゃんの写真ですか」
「……はい」
「見せてもらっても?」
僕の厚かましい申し出に、亜紀さんはハっと顔を上げた。
憂いを帯びた表情ってこういうのを言うんだろうか。
迷いのあるなしは分かるのに、その内容まで汲むことができないからどうにも踏み出せない。
「……すみません、出しゃばって。いいんですよ。僕は先に帰りますから、ゆっくり見てください」
踏み出せないから引こうとした僕に向かって、淡いピンクのアルバムが差し出された。
「どうぞ。優衣の……赤ちゃんの時のです」
「ありがとうございます」
受け取ったアルバムは表紙に“ゆいちゃんのあゆみ”という刺繍がなされていて、絵柄も素朴で可愛らしかった。
こういう増やせるタイプのアルバムって今でもあるんだな。
けっこう大きいアルバムと、自分の持っていた荷物のバランスを考えて、迷った末亜紀さんの座るソファに腰を下ろした。
金持ちこん畜生!な大きいソファは、隣に座った所でお互いのパーソナルスペースを侵したりはしないので助かる。
最初のページには優衣ちゃんが生まれた時の身長や体重の記録がしてあった。
「2470グラムって小さい方ですよね」
「はい。あの子少し早くに出てしまって、小さい赤ちゃんだったんです。今でも小柄ですけど、たぶんあれは好き嫌いのせいじゃないかな」