拾われサンタ、恋をする
亜紀さんの口調がやや柔らかくなったのを感じて、僕も安心した。
生後一日の写真に目を開けている優衣ちゃんが映っているが、まぶたが今と違って一重だ。
病院内での家族写真が続く中、孫バカ親父の入り込み方がすごい………お前が産んだのかと言いたくなる。
親父出現率のせいで忘れそうになるが、不自然なほど優衣ちゃんの父親が出てこない。
「聞いていいのか分かりませんけど……パパと映した写真はないんですか」
「ありますよ。少し先、ここに」
退院と一週間健診を飛ばした先に、ようやく現れた一枚の写真。
ニット帽を深くかぶり、優しそうな笑顔の男性が優衣ちゃんを抱いて微笑んでいる。
撮られた場所は病室だが、さきほどの産院ではないことくらいすぐに分かった。
そしてその男性の写真は何枚か続いた後、徐々に枚数が減っていく。
「………」
「優衣が生まれた時には、かなり病状は悪くなってきてたんです。一緒にいられる間にたくさん写真撮っておかなきゃと思って、嫌がられるくらい撮ってたんですけどね」
亜紀さんは話しながら、そっと男性の横顔を撫でた。
「頬がこけてるでしょう?」
「……そうですね」
「だんだん痩せて細くなっていく姿を形に残されるのは嫌なんじゃないかって。それに気づいてからは写真が撮れなくなりました」
台紙を増やせるアルバムは、優衣ちゃんの生後半年から増やされることもなく、そこでプツリと途切れていた。
ここで何があったのかなんて、よほど神経の太い人でなければ訊ねられないだろう。
「私はあまり写真を撮らなくなりましたけど、父が毎日のようにカメラ持って追いかけ回っていたので、優衣の写真自体はたくさんあるんですよ」
押し黙った僕の心情を察してくれたのか、亜紀さんは努めて明るい声で言った。
だけど、まだ写真を整理する気持ちにはなれないんだ。
亜紀さんの悲しみは、きっと今も続いている。