拾われサンタ、恋をする
「大切なものを見せていただいて、ありがとうございます」
見終わった今、心にズンとかかる重みがある。
亜紀さんがこれを見せる前に躊躇した意味が、ここにきて少し分かった気がした。
「優衣ちゃんはお母さん似だと思っていたけど、お父さんに似ている所があるんですね。鼻とか眉の形とか」
「ふふ。そうでしょ」
アルバムを返すと、受け取った亜紀さんは大切そうに胸の前で抱きしめた。
「亜紀さん、あのね」
「はい」
「どうして急に………これを見ようと思ったんですか」
そう迷いながら口にして、苦笑いをする亜紀さんを見てちょっと後悔する。
でも気になって仕方がない。
写真に残せないほどつらい時期のものを、なぜ今振り返って見ようと思ったのか。
「………優衣が肩車をしてもらっているのを見て、錯覚に陥ったというか……。今まで失くしたと思っていたものの方が嘘なんじゃないかと思ったりですね。すみません、上手く言えないんですけど。とにかく不思議な感覚があったんです」
それを確かめようと思った、亜紀さんはそう付け加えた。
優衣ちゃんを抱っこしていた僕の姿に、思い出の中の彼をダブらせてしまったのだろうか。
だからこうして、写真にしか残らない笑顔で、現実を再確認していたのかもしれない。
「旦那さんハンサムだから、僕から連想されたと知ったらきっと怒りますよ」
「そんなこと!南くんよりひょろっとしてましたけど、背が同じくらいだったと思います!少し高かったかな……」
「はは」
さりげなく失礼だなこの人、デコピンしてやろうか。
「さてと……」
立ち上がって伸びをひとつする間も亜紀さんの視線を感じるが、なんだか僕も慣れつつあった。
「僕が帰った後、鍵を閉めておいてくださいね」
「それは、はい。でも朝食は?」
「ふだんオニギリひとつとかなんで、須藤邸の朝食食べたら胃がひっくりかえります」
「そうなんだ」
クスクス笑っている亜紀さんの顔は、もうすっかりいつもの笑顔だ。