拾われサンタ、恋をする


表まで送りますと亜紀さんは言う。


寒いから断りを入れたけれど、それでは気が済まないからという亜紀さんの気持ちが少しわかって、僕の方が引いた。


「お世話になりました。奥さんにもよろしくお伝えください。優衣ちゃん怒るかな」


「ぐずってもすぐに保育園に送り込みますから、大丈夫ですきっと」


「……保育園での一件は聞きました?」


「はい。寝る前に一緒に話しました」


にっこり笑う亜紀さんに嘘はないみたいなので、僕も笑って頷く。


靴を履いてからもう一度彼女を振り返って見た時、どうにも気がかりなのはこっちなんだよなと思い至った。


肩にかかったショールを握りしめたまま、きょとんとしている姿が心もとない。


「………それで、亜紀さん自身は大丈夫?一人になってから泣いたり、とか」


「………」


別れ際にそんなことを訊かれるとは思ってなかったのだろう。


言葉もなく、ただ亜紀さんの目が大きく開いた。


「………そうなんでしょう?」


こんなことを訊いてもいい間柄ではないくせに、きっと自分はここ一カ月で彼女のことを知り過ぎた。


ふとした表情の変化で感情が手に取るようにわかるし、無性に世話を焼きたくなる。


優衣ちゃんに対する気持ちとは違う感情が動く。


「……南くんはずるいぐらい鋭いです。年上ぶっていたいのに、そうまで図星を指されたら、私の立つ瀬がなくなっちゃう」


年上ぶりたかったのか。


その意思は尊重してあげたいところだが、はっきり言って無理がある。


「僕は長男気質なもので」


「ですよね。妹さんじゃないですか?」


「いえ、果てしなく出来の悪い弟が一人」


それを聞いた亜紀さんが一瞬意外そうな顔をしたものの、すぐに砕けて笑い始めた。


「じゃ、きっと私もそっちの系統なんだ」


「そんなことはないですけど……そうだなぁ…」


半分くらいそうかも、と思ったことは言わないとして、正直なところ自分がこの人に向けている感情をどう表現すればいいのか形にならない。


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