拾われサンタ、恋をする


娘さんと暮らしているという女性の部屋は、雑然としていた。


小さい子向けの玩具が出しっぱなしだったから、余計にそう感じたのかもしれない。


「ごめんなさい、散らかってて。どうぞ座ってください」


「すぐ帰りますんで、気を使わないでください」


暖房の効き具合が丁度いいな、そう思ってニット帽を取ると、女性が目を丸くして僕を見てきた。


「……何か?」


「あ、思ったよりお若いので驚いてしまって。学生さんですか」


「はい。大学は出ましたけど、今は院に残って学生続けてます」


しっかりされてますね、そう言って茶器を並べている女性は、僕より少し上に見えた。


薄化粧に、後ろで束ねただけの髪。


化粧と香水の匂いがきつかった紗理奈よりも、清潔感を感じる。


リビングには、ついさっき持ち主が代わった特大クマが陣取っていた。


「そういえば、娘さんは?」


「奥の寝室で眠ってます。夜九時には眠くなってしまうんですよ。まあ、まだ四才ですから」


「……ここにお二人なんですか?」


「はい。主人は娘が生まれてすぐ、他界したんです」


「………」


「そんな重い話じゃないですよ。娘と楽しくやってますし、気にしないでくださいね」


そ、そう言われても……どう受け取っても重い話だと思います。


でもそうか、それで―――つきっきりで娘さんの看病をしていたから、プレゼントを買いに行けなかったんだ。


抜けようと思って研究室を抜けてきた自分は謝れば済む話。


でも、この人の事情は違うんだ。

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