拾われサンタ、恋をする
サンタ、感激する
人と人なんて、毎日顔を合わせるような関係でもない限り、そう頻繁には会えないものだ。
亜紀さんが仕事に復帰してからは、寺嶋母娘と会えないまま日々が流れていく。
会えない間も須藤教授からどんどん情報が流れてくるので、僕自身はそんなに距離を感じることはなかったけれど。
優衣ちゃんに忘れられていないかな………という不安はありつつ、僕は僕で研究の方が詰まってきていて、あまり自由に行動できないまま二月に突入。
バレンタインシーズンだというのに、男ばかりで成り立っているこの研究室は、相変わらず色恋話のひとつも出ない。
「手作りは貰うの照れくさ過ぎますよねぇ」
「分かるわー。買ったのでいいからさらっと。じゃ一緒に食べよ?みたいなノリが許されて欲しい、男としては!」
「そうですよ、ちっちゃいのでいいんですよ。義理でいいんですよ……」
と、この流れで最後はどす黒い空気が漂い始めるというパターン。
いい加減に学習すればいいのに、男と言うのは馬鹿な生き物だ。
「まーまー、落ち込みなさんなって!お前ら十四日は空けておけよ!男の勲章かき集めにいくぞ!」
後輩の肩にのしかかって豪快に笑い飛ばすのは上本先輩、通称クマ先輩だ。
今日も目の下のクマと元気に共存している。
「クマ先輩、もしかして……女の子集めてくれるんですか!」
「当たり前じゃないか!寂しい男がこれだけいるってことはな、寂しい女も必ずいるんだよ!」
「ひゃっほーーー!」
僕はその会話に加わる気はないが………本当に誰も気づかないのだろうか。
男女ともに寂しい奴らが集まる飲み会なんだぞ。
そんなところで義理チョコ配ってくれる殊勝な女の子なんているのかってことに。
「よっしひっろくーん!」
「何ですか、嫌ですよ、僕は行きませんよ」
ベタベタとくっついてくるクマ先輩を追い払って、巻き込まれないようにパソコンの前を死守する。
すると僕の横に、けっこう立派な大きさの包み紙が無遠慮にドンと置かれた。