拾われサンタ、恋をする



「これが男の憧れの………!」


「ミニスカートで膝枕!」


「世紀の大発明じゃないですか!どこで買ったんすか、これ!」


口々に賞賛する後輩たちにむかって、クマ先輩は何度も深く頷いている。


真夜中のインターネットショッピングは、昼間と違う何かが見えてくる!というクマ先輩の説教は本気で要らない。


「盛り上がってるとこ悪いですけど、僕これいりませんよ」


「………」


ゼミ生数名が、まるで雷に打たれたかのような顔で僕の方を見てくる。


お願いだから、その間抜けに開いた口を閉じてほしい。


「南、お前……どこか悪いんじゃないのか?」


「そうですよ、独り身になった今だからこそ必要なものでしょう!」


「ホルモン研究するより性欲研究したらどうですか。南先輩、前から思ってたけど草食系すぎます」


僕は一番失礼なことを言った大西に、ひざまくらとやらをぬっと差し出した。


「じゃ、大西にやるよ」


「かかか勘弁してください!こんなもの家にあったら親が来た時に心配されちゃいます!」


「うん全く同じこと言えるよ、僕も」


親を不安にさせる、わびしい気持ちを増幅させる、など。


所有するだけでデメリットが大きすぎる。


「本物のひざまくらしてもらえる南には必要ないってことかー」


「いないって言ってるじゃないですか。いつまでそのネタ使って遊ぼうとしてるんですか先輩」


「だってなあ!けどさ、実際これどーする?」


「………」


引き取り手のない物体、ひざまくら………捨てて帰りたくとも、この目立つフォルムのおかげで大学構内のゴミ捨て場に運ぶのは非常に危険だと思われる。


下宿先のマンションも同じ理由で却下だ。


「……ここに置いておくってのはヤバイですかね」


どうやら捨てたくなさそうな大西が、そんな提案をした。


「ほら、ソファでみんな仮眠とるじゃないですか。その時用の枕くらいにはなるんじゃないっすか?」



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