拾われサンタ、恋をする
「こ………これで仮眠取るの?俺ら」
「………」
徹夜続きのゼミ生達が、痛む頭を抱えながらた倒れこむ。
傍らにいつも寄り添うのは、深紅のミニを纏う女性(の足のみ)、設定は必然的に癒し系。
“ お疲れ様、私の太ももで休んで ”と言ったとか言わないとか―――…
「ちょっ、めくるめく妄想が襲ってきて眠れません!」
「仮眠室反対!」
まじめな学生たちから、ついに反対意見が出始める。
絶対持って帰りたくない僕としては、研究室の備品になって欲しいのに。
その内誰かが須藤教授の意見を聞きましょうよ、と言い出した。
この時点で僕は密かにシメシメと思っていたんだ。
研究室に出入りしている人間で一番悪ふざけが好きなのはクマ先輩じゃない、須藤教授だ。
僕は立ち上がり、ゼミ生全員を見渡して宣言した。
「それでは改めまして……須藤ゼミの皆さん、プレゼントありがとうございます。嬉しいです。いい後輩に恵まれて僕は幸せです」
「てめえ南!俺も入れろ!」
割って入るクマ先輩のことはスルーだ。
「この寝心地のよさそうなクッションで寝る幸せを、僕はぜひ皆さんと分け合いたい。けれども学びの場においてこの形状。反対意見が出ることも当然です。ここは敬愛する師、須藤教授のご判断に従いましょう。いかがですか」
「賛成」
「異議なし」
白衣の連中からポンポンと賛成票をもらったところに、会議帰りの須藤教授が研究室に入ってきた。
ナイスタイミングだ。
「お疲れ様です、先生」
「おう南………お前の顔と全然不釣り合いなもの持ってるが、どうしたんだ?」
「これ、見た目はともかく一応クッションなんですけど、仮眠用に置いて帰ってもかまいませんか?」
「クッション……はっはあ!なるほどな、やるじゃないか!おう、置いておけ置いておけ!いいかお前達、まずは俺が試すからな!」
「どーぞどーぞ」
須藤教授は僕からひざまくらを取り上げると、ソファに向かってダッシュしていく。