拾われサンタ、恋をする
その姿を呆然と眺めているゼミ生一同は、頭の中で同じことを考えていたはずだ。
ゼミ選びの段階に戻ってやり直したい!と。
「うふおおう!ちょっと硬めだがいいんじゃないか!このスカートの裾と太ももの境界線の感触はなかなかリアルだ!」
「お気に召していただけたようで、幸いです」
僕はそっとポケットから携帯を出して構えた。
ぴろりーん、などというかわいいシャッター音を立ててしまったが、本人は全く気付いていないようなのでまあいい。
「ちょっと先輩、大丈夫なんですか写真なんか撮って……」
「心配しないでいいよ、大西。悪用はしない。脅迫はするけど」
「………南先輩って時々怖いっすよね」
「そうかな。大西は院を狙ってるんだったよね。だったら覚えておいた方がいいよ。あの教授のゼミにいる限り女子生徒は入ってこないから」
「そうでしたか。次年度に女子が入ってきたら、ひざまくらなんて置いておけないでしょって言おうと思ってたんですけど……心配なさそうっすね」
だから上本先輩みたいに外に求めに行くという方程式が出来ちゃうだけど、それは言わなくても分かってくれたのだろう。
後輩の肩がこれでもかというくらい落ちている。
かくして、ひざまくらは研究室に居座ることが決定した。
「……ん?」
教授の赤面画像を保存中に、メッセージ受信の通知が鳴った。
「先輩、今女の子の名前が見えた…」
「めざといなぁ、大西」
From:小田あかね と映し出された文字を見て、僕自身が誰だったかなと考えたというのに。
「同郷の友人だよ。これといって特別な関係じゃないけどね」
「あーあ。すごいですよね、南先輩は」
「……何が?」
「研究でも成果出して院に入学して、忙しいはずなのに自分だけ彼女作ってたし。合間でバイトにも行ってますよね。俺ら、先輩が大きな失敗したとことか見たことないですもん」
俺なんてクマ先輩と合コン何回も行ったのに連絡くれた子いませんよ、と最後は気の毒なくらい凹んでぼやかれた。