拾われサンタ、恋をする
高校時代の印象そのままに大人になったような小田さんは、とても明るい人だ。
当時はあまり接点がなかったけれど、こうしてサバサバしている女性は苦手ではない。
「荷物もないみたいだけど」
「ああ、私?もう店に置いてきた。実は早く着いちゃったんだよね。遠藤も来てるよ」
「そうなんだ。ごめん、僕が遅かった?」
「違う違うー。まあ、行ってみてからのお楽しみってことで。さっさと移動しよ」
黒いヒールでカツカツと前を歩いて先導してくれる。
慣れない土地で不安と言っていたのに、僕よりよほど都会に馴染んでいるように見える。
「小田さんって仕事は何してるの」
「アパレル。バイヤー目指してて、今は売り場で下積みしてるとこ。女の世界ヒドイよー、すんごいストレス!」
だから今日は思いっきり愚痴るから!と言い切られた。
「はは、覚悟しとくよ」
「ほんとね、私より先に酔わないでよ?」
彼女の言い方が明るいからか、こちらとしても嫌な気分にはならない。
「店ここ」
振り向きもせず入って行ったのは、おじさん率高めの居酒屋だ。
赤い提灯が似合いそうな……とても若い女性の好む雰囲気ではない。
「遠藤くんのおすすめ?」
「私。こういう店の方が美味しい酒飲めるじゃん」
「……同感」
同郷の友達との初飲みで、同い年とはいえ相手は社会人だし、どういう路線になるのか不安があったのに。
入店と同時に来た「らっしゃーい!」の掛け声のおかげで、そんなものが一気にふっ飛んでいった。
「南ー!」
奥の座敷から、仕事帰りのサラリーマンが手を挙げている。
「あ!ちょっと遠藤!私のとり軟骨、全部食ってるじゃん!」
「冷めたら不味いだろ。ほら、南座れよ。そっち、小田の横」
「うん……?いいけど、なんで」
「俺がそこ座ったら何発殴られるかわからん」
「……それ、僕も同じだと思う」
飲み物のメニューを見ながら、今日は特に慎重に発言しようと決めた。