拾われサンタ、恋をする
「乾杯しよ!」
「君たちもう飲んでない?」
「私達は乾杯し直すから!」
「……単に騒ぎたいたけなんじゃ」
「岡山にカンパーイ!」
慣れない体育会系のゴングが聞こえる中、ビールののど越しが旨いと思う自分は、確かに年を重ねているんだな。
「───してからのぉ……」
「へ?」
まだジョッキを傾けたままの僕の前に、見覚えのある三角帽子が二つ。
止める間もなく二人が紐を引き抜いた。
「ハッピーバースデー!」
「ゴホッ……!」
間近で聞く破裂音は、必要以上に心臓に刺激を与える。
なんとかビールを浴びることは回避できたけど。
「ちょっと!店の中でこんな……っ」
「バーカ、許可もらってるよ」
「南くんのアフロいぇー!」
カウンターの中からはお店の方々から盛大な拍手をいただく。
サラリーマンが集う居酒屋で、これだけ派手に祝ってもらったことは初体験だ。
「……よく知ってたね、今日だって」
何気なく訊ねてみたら、二人は気まずそうに顔を見合わせた。
「だって毎年クラスでネタにされてたでしょ」
「あれは俺らも反省しててさ。ほい、これ。プレゼントだ。よかったら学校で使って」
頭に紙テープを乗せられたまま、きちんと包装された小箱を受けとる。
「文房具?」
「おう。選んだのは小田だぞ」
「南くんさすがぁ、勘いいね。ペンなの。ちょっとシックなデザインだから、長く使えるかなと思って」
濃紺のスタイリッシュなデザインのペン。
さすがセンスのいい小田さんだ、これは本当に嬉しい。
「ありがとう。こんないいの持ってないよ。大切にする。先週研究室でもらった物と段違いだよ、まったく……」
ため息交じりにそういうと、小田さんは「仲がいいね。なにもらったん?」と羨ましそうに訊いてきた。
女の人の前で言いたくないけど、この人なら笑って流してくれるか。
「足もらった」
「あ?」
「スカートはいた足。……ひざまくらって言うらしい」