救済のキス
Kiss
「はぁ。これ、あと何個くらいだろ……」
随分前に陽は暮れてる。
いくらなんでも、いつもだったらとっくに家に着いてる時間だ。
両手を止めて、平台に積んである箱と、足元にあるダンボールに目を向ける。
そうしてもう一度出た溜め息は、自分でもわかるくらいに相当深いもの。
「雇われ店長なんて、損な立ち位置だよ」
そんなことを日々いつも思ってるわけじゃない。
でも、〝こんなとき〟は、ついそう思わざるを得ない。
中型ショッピングモールの雑貨屋の店長をして、二年。その前から働いてはいたから、社歴的にはもうすぐ二ケタになるところだ。
雑貨店ということだけあって、部下は女性ばかり。
それは別に何の問題もない。それに、いい子ばかりで和気藹々と仕事してる。
ただ、やっぱり店長と名の付く私には、当然それ相応の責任はあるわけで。
まさに今は、その〝責任〟を全うしている最中……だと、思う。
しん、とした売り場の中で、ぽつんとひとりきりでいる私。
周りのテナントのスタッフも当然いなくて、営業中は賑わっている音がする場所だからこそ、そのギャップで今はとても淋しい。
大口の注文の納期が明日に迫っていた。
百個単位の注文は、売上的にはとってもありがたい。だけど、その分、ミスがあったりすると打撃が大きい。
今回のように――。
「責めれば解決するわけじゃない。まずは目の前のことをクリアする!」
自分に言い聞かせるように、敢えて声に出してみた。
「まーたなんかやってんの?」
「えっ……!」
随分前に陽は暮れてる。
いくらなんでも、いつもだったらとっくに家に着いてる時間だ。
両手を止めて、平台に積んである箱と、足元にあるダンボールに目を向ける。
そうしてもう一度出た溜め息は、自分でもわかるくらいに相当深いもの。
「雇われ店長なんて、損な立ち位置だよ」
そんなことを日々いつも思ってるわけじゃない。
でも、〝こんなとき〟は、ついそう思わざるを得ない。
中型ショッピングモールの雑貨屋の店長をして、二年。その前から働いてはいたから、社歴的にはもうすぐ二ケタになるところだ。
雑貨店ということだけあって、部下は女性ばかり。
それは別に何の問題もない。それに、いい子ばかりで和気藹々と仕事してる。
ただ、やっぱり店長と名の付く私には、当然それ相応の責任はあるわけで。
まさに今は、その〝責任〟を全うしている最中……だと、思う。
しん、とした売り場の中で、ぽつんとひとりきりでいる私。
周りのテナントのスタッフも当然いなくて、営業中は賑わっている音がする場所だからこそ、そのギャップで今はとても淋しい。
大口の注文の納期が明日に迫っていた。
百個単位の注文は、売上的にはとってもありがたい。だけど、その分、ミスがあったりすると打撃が大きい。
今回のように――。
「責めれば解決するわけじゃない。まずは目の前のことをクリアする!」
自分に言い聞かせるように、敢えて声に出してみた。
「まーたなんかやってんの?」
「えっ……!」
< 1 / 3 >