やむにやまれず雨やどり
それが正式に受理されたと通知された。
そっと隣の部署を見る。
いない。
ここ数日いない。
大きいから、いたらすぐに分かる。
あわただしく、デスクの片付けやら、追い出し会やらをやってもらい、
笹原さんとは顔を会わせないまま、システム管理部に異動した。
もはや別棟の建物になるので、顔をあわせることはまずない。
よっしゃ。
そう思ったとたんに、あの体温を思い出した。
カラダが覚えてる。
な、な、なにを考えとるのかねっ!
研修の日々が始まった。
だけど、どっかで考えてる。
どっかで、これで良いのかなって。
……これで、良いんだよ。そうだよ。
異動して、一ヶ月くらい経ったころだった。
「清水さん、笹原主任が来てるよ」
「ひぇっ」
別館に来るなんて!
思わず、デスクの下に隠れたくなった。
だけど、既に笹原さんの規格外な体格が、ドアから見えていた。
なぜなぜなぜ。
逃げ出したい。
忘れていた、あの夜のことを思い出しそうになる。
私は立ち上がって、笹原さんの前に立った。
家出が見つかった中学生の気分だ。
戸惑ったような笹原さんの声が聞こえた。
「驚いた」
「急でして」
「出張から帰ってきたら見あたらないから、辞めたかと思ってあせったよ」
「どうもお世話になりまして…」
「お世話してない」
デスヨネ…
「寂しいよ。いないと」
ビックリして顔を上げた。
だって隣だったけど、仕事の関わりはないのに。
「やっと目が合った」
心の底まで射ぬかれるような瞳に、全身が震えた。
「メシでもどう?お礼もしてないし」
「研修が終わってませんので……終わってもシステムですから」
システムは、就業時間が不規則だ。
休日出勤も多い。
笹原さんが何か言いたげにしているけど、
「じゃあ……どうも」
そう言って、会話を打ち切ろうとした。
急に肩をつかまれた。
「俺のせい?」
あわてて首を横にふる。
「食事いこう」
あわわわわ。
もう一回、首をふった。
「研修終わってから、一度だけでいい」
誰かが私を呼んだ。
「行きません……」
走るように、立ち去った。
背中を向けても笹原さんの存在に圧倒される。
圧倒されて、思い出しちゃう。
あの腕と唇の感触。
あの手と胸の体温。
あの交わされた息づかい……
あのリアル。
……お、お、思い出すなー!
このバカもんがっ!
会社だぞ!?研修中なんだぞ!?
この妄想エロOLめ!
「行きません行きません行きません…」
呪文のように唱え続けた。
そっと隣の部署を見る。
いない。
ここ数日いない。
大きいから、いたらすぐに分かる。
あわただしく、デスクの片付けやら、追い出し会やらをやってもらい、
笹原さんとは顔を会わせないまま、システム管理部に異動した。
もはや別棟の建物になるので、顔をあわせることはまずない。
よっしゃ。
そう思ったとたんに、あの体温を思い出した。
カラダが覚えてる。
な、な、なにを考えとるのかねっ!
研修の日々が始まった。
だけど、どっかで考えてる。
どっかで、これで良いのかなって。
……これで、良いんだよ。そうだよ。
異動して、一ヶ月くらい経ったころだった。
「清水さん、笹原主任が来てるよ」
「ひぇっ」
別館に来るなんて!
思わず、デスクの下に隠れたくなった。
だけど、既に笹原さんの規格外な体格が、ドアから見えていた。
なぜなぜなぜ。
逃げ出したい。
忘れていた、あの夜のことを思い出しそうになる。
私は立ち上がって、笹原さんの前に立った。
家出が見つかった中学生の気分だ。
戸惑ったような笹原さんの声が聞こえた。
「驚いた」
「急でして」
「出張から帰ってきたら見あたらないから、辞めたかと思ってあせったよ」
「どうもお世話になりまして…」
「お世話してない」
デスヨネ…
「寂しいよ。いないと」
ビックリして顔を上げた。
だって隣だったけど、仕事の関わりはないのに。
「やっと目が合った」
心の底まで射ぬかれるような瞳に、全身が震えた。
「メシでもどう?お礼もしてないし」
「研修が終わってませんので……終わってもシステムですから」
システムは、就業時間が不規則だ。
休日出勤も多い。
笹原さんが何か言いたげにしているけど、
「じゃあ……どうも」
そう言って、会話を打ち切ろうとした。
急に肩をつかまれた。
「俺のせい?」
あわてて首を横にふる。
「食事いこう」
あわわわわ。
もう一回、首をふった。
「研修終わってから、一度だけでいい」
誰かが私を呼んだ。
「行きません……」
走るように、立ち去った。
背中を向けても笹原さんの存在に圧倒される。
圧倒されて、思い出しちゃう。
あの腕と唇の感触。
あの手と胸の体温。
あの交わされた息づかい……
あのリアル。
……お、お、思い出すなー!
このバカもんがっ!
会社だぞ!?研修中なんだぞ!?
この妄想エロOLめ!
「行きません行きません行きません…」
呪文のように唱え続けた。