やむにやまれず雨やどり
震えそうな声で言った。


「怖かったんです。たぶん、ちゃんとオンナやるのが……嫉妬にまみれたり、誰かと闘ったり、自分が悪いのに、ヒトのせいにしたり……」


落ち着いた目で、笹原さんは聞いている。


「笹原さんは『オトコのひと』って感じがして、自分がオンナだって意識しちゃって……それを怖く感じたんです。それに、笹原さんは強いっていう印象があったので、思うぞんぶん悪者にできたんです」



だんだんと声が落ち着いてきた。

ワタシは、そんなこと思ってたんだ。


「つまり笹原さんに甘えてました……」



笹原さんが、私の頬をつまんだ。

「話せてよかった」



そうかもしれない。

つままれた頬がゆるんだ。




突然、そのデッカイ手で頭をつかまれた。


「ちょちょちょっっ」


私の抗議を打ち消すかのように、頭をグラインドさせられた。


「ここが会社で、まだ昼休みっていうのがサイアクだ」

「ああ~……そ、そ、ああの、酔っちゃいます」

「イライラしてきた……」

「さ、笹原さんは何かないんですか!困ったクセとか……!」



そこまで言って気がついた。

不機嫌な声が聞こえた。



「声がデカイところだろ」



慌ててフォローした。


「こ、こ、声が大きい件は、野球部だから致し方ないですよね!」

「野球やってんの知ってんだ……?」

「中国では、大きな音を出して厄払いするという風習が……」


なんの話してたんだっけ??


「そっか、ちゃんと意識してくれてたんだ」

「神社で柏手を……い、意識!?」

「ずっと、俺だけ意識してたのかと思った」


笹原さんを見上げた。



オトコだ。

オトコのひとがいる。



当たり前のことだけど。



「俺のこと好きになれよ」

「もう好き……」


おいっコラッ!!



ま、真っ赤だ、ぜったい。

今、顔あかい……



グッと体が引き寄せられた。


「俺が困ってるのは……」

笹原さんが口を開いた。


「システムが来てるって聞くと、どこのフロアだろうが行かずにいられないこと」


耳元に息がふれる。


「清水さんをどっかに閉じこめて、芸能人だろうが何だろうが、考えられないようにさせる妄想ばっか浮かぶこと」


この人、こんな良い声してるんだ……


「捕まえて、自分から好きって言うまで責めまくりたい」
< 16 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop