やむにやまれず雨やどり

それでも転属願いなんて、

大それたことは考えていなかったんだけど、

この『大それたことを考えられない』っていう自分が、

つくづくイヤになった。




せまい……



調査室は、ガラス張りの個室だった。

8畳くらいのその部屋に、5人の人間と膨大な資料が詰め込まれていた。




せまい……



生まれてこのかた、葛飾から一歩も出てない。

それどころか、先祖代々葛飾だ。

戦前から変わらぬ路地に、親戚や友達や恩師がギチギチに詰め込まれている。



せまい……せまいんだよ。



だけど一人暮らしするとなると、葛飾より良いと思える場所がなくって。

だって物価が安い。

アイドルオタクしてると、給料なんてあっという間に吹っ飛ぶ。



……じゃあ、やっぱ実家暮らしでいいかって。



そんな時、笹原さんの一喝が漏れ聞こえてきた。


「やってから考えろよ!」


カラダがビクッとなった。


「なんだよ!考えてる時間が無駄だろーが!?」


もう嫌だ!!

少なくとも転職したい!



この鬱蒼とした、人生のジャングルから脱け出したい!


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