違反のキスでよければどうぞ【完】
「いないよ。手のかかる生徒に付きっ切りでそんな暇ない」
「……もしや私のことです?」
「他に誰がいるの、今回のテストは易しく作ったから、赤点取ったの柴崎さんだけなんだけど」
深いため息をついた先生に、えへっと苦笑してマフラーを首に巻いた。
もう外は寒い。二時間の補習の後じゃ、すっかり日は落ちきっていた。
数学の赤点常習犯の柴崎とは私です。
「ごめんね先生、でも3日間の補習頑張ったので、ご褒美ください! ……なんちゃっ、」
て。
と、冗談にするよりも早く、腕を引かれてキスされた。
暗い教室で、かつてなく間近にある先生の唇が小さく動く。
「……秘密な」
一週間前の出来事。