違反のキスでよければどうぞ【完】
しかし生活指導を請け負っている当の先生は取り調べにあまり気が乗らないのか、気怠げに頬杖をついている。
……一週間前、私にキスしてきた人間とは思えないほどこちらに興味を示さない。
ていうかまさかの説教。全然あの日の話じゃなかった。
「……あの、先生? 今回だけは見逃して?」
ね? と片目を瞑ってぺろりと舌を可愛く出してみるけど、机を挟んで向かい側に座る彼は更に深く眉間の皺を刻み直しただけだった。
「柴崎さん」
「はいっ」
先生のこめかみの青筋がひくひく動いて、次に私への嫌味が吐き出されるであろうことを察するのは容易い。
「今回だけって? これで何回目だと思ってんの、この部屋来んの。いちいち指導させられる俺の身にもなってよ、面倒臭い。いい加減こっちも庇いきれなくなるって分かってる?」
「はいごめんなさいめちゃくちゃ反省してますごめんなさい」
「先週は髪染めて学年主任怒鳴らせたばっかだよね?」
「えー? で、でも、私の茶髪すごい好評だったんですけどね……?」
「柴崎さん、数学以外の成績は良いのに問題行動ばかり起こしてると損するよ」
「だ、だって!」
ちょっとだけ机に身を乗り出せば、先生との距離が一気に縮まる。
なに、と近付いた分若干身を引かれたけど気にしない。
……だって、先生は全然分かってない。