違反のキスでよければどうぞ【完】
「――こうやって学校で堂々と二人きりになれる機会なんて、問題起こしたり、苦手でもない数学、わざと赤点取らない限りそうそうないじゃないですか!」
「……またあなたは、……ていうかやっぱりわざとテスト手抜いたんだ」
おっと口が滑った。
呆れ半分、先生は本日何度目か定かでない浅いため息を吐き出した。
……しかしそんなに迷惑そうな顔しなくても。
「せ、先生は私といてドキドキしないですか!? 密室なんですけどここ!」
「密室じゃない、鍵はかかってないから外からも中からも簡単に開くよ」
「うっ」
「残念だったね」
「……キス、……したくせに」
「……」
言おうか迷ったことが、口を衝いて出てしまった。
僅かに動揺した風を見せてだんまりを決め込んだ先生に、やっぱりあれは現実だったのか、と確信して私までもが動揺してしまう。
しばしの気まずい沈黙の後に、ガタッと音を立てて徐に立ち上がった先生は、机に手をついて私の耳元に唇を寄せる。