違反のキスでよければどうぞ【完】
「キスなんか、してない」
「……っ」
い、息、耳にかかっ……た、です、けど、なんだ今の!?
かーっと顔を熱くする私の反応をにやりと笑って、先生はふんと鼻を鳴らす。
24歳、高学歴のイケメン数学教師。基本冷たいけれど根は真面目。
……っていうかしてないってなんだよ! したよね、したでしょ! おい!
熱を持った右耳を手のひらで覆い隠したけれど、じんじん腫れたみたいに熱は引いてくれない。
散々好きにさせといて、もっと夢中になってしまうようなことするなんてズルイ。
「じゃ、柴崎さんバイト辞めるってことでいいよね?」
「……勝手に決めないでください」
「勝手じゃないよ校則違反だから。ていうか辞めなきゃ停学だからね」
「……停学、嫌です」
「うん、じゃあ辞めてね」
「……でも先生の言う通りにするのは、なんかもっと嫌だ」
悔しい。かなわない。
どんなに大人ぶっても、先生との7つの年の差は簡単には埋まらない。
結局私の気持ちは、子供じみた言葉でしか吐き出されない。こんなんじゃ伝わらない。