違反のキスでよければどうぞ【完】





先生も呆れたように眉根を寄せるから、ずーんと心臓が重くなった。


……面倒くさい奴って思われてるのが空気でわかる。




「……先生が、好き、って、言ってくれたらバイト辞めます」


「言わないよ」


「言ってよ」


「言わない」


「……好きじゃないから?」




キスはしたのに。



もう面倒くさい奴でいいや。と開き直って先生を睨みつけた。


ここまできたら何を言っても同じだ。



……嘘。同じじゃない。ほんとはこれ以上、私のこと嫌いになってほしくない。


言わないほうがいいって分かってたけど、勝手に目頭が熱くなってく。


いやいやいやいや、自分から聞いといて泣くのはなしだよな、と思うけど瞳の中は潤っていくばかりで。


訊いてしまったことを後悔した。


何も言わない先生の、困った顔が答えなんだと思う。



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