癒しのひと時をキミに。【ぎじプリ企画】
見てくれてるのはアナタだけ。
「あれ?今日は少し遅かったんじゃない?上司に怒られるよ」
私の姿が見えるなり、時計を確認した彼。
私より小さい彼だが、ベテランであり、頼れる先輩だ。
「うるさいですね。私だって仕事で忙しいんです」
私は入社一年目の新入社員。
入社から半年、努力の甲斐あって、重要な仕事を任された。
いわば初仕事だ。
つい気合が入ってしまい、今日は予定の時間を30分ほどオーバーしてしまった。
たしかにそれは自分でも悪いとは思っている。
でも、この大変さを知らない彼には何も言われたくない。
「仕事もらえたんだね。おめでとう。仕事がこれしかないキミを心配していたんだよ」
そんな彼に「余計なお節介よ」と思いながら、何もしない彼の隣でせっせと働く。
「えっと……部長はこれで、課長はこれ。それと、」
半年もすれば覚えてくる社員の好み。
飲み込みが遅い私は、覚えるのにも時間を費やした。
私は効率が悪いのだ。
だから、人一倍努力が必要だった。
< 1 / 4 >