幼馴染みの期限
***
「……じゅり……樹里っ」
肩を揺さぶられてハッ、と目を覚ます。
「おい、大丈夫か?何かすげーうなされてたけど」
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
真冬だから車内はそんなに暑い訳ではないのに、額に触れるとじっとりと湿った汗の感触がした。
「……何だか嫌な夢見ちゃったみたい」
まだ胸がドキドキと音を立てて鳴っている。
よく思い出せないけど、見ていた夢はあまり良いものではなかったような気がする。
「顔色あんま良くないな」
ほら、とハンドタオルを渡された。
受け取って汗を拭いていると今度は水を渡された。いつも私が飲んでいるもので、ちゃんと冷えていた。
いつの間に買ってくれていたんだろう。
「何か……広海が優しくて、気持ち悪い」
「……んだよ」
「だって優しい広海なんてありえないもん……。台風とか来ないよね?」
「こんな時期に来るかよ」
いつもなら「来るワケないだろ馬鹿が。寝惚けてんのか?」くらい言われてもおかしくないのに……やっぱりおかしいよ。
台風は来なくても最悪大雪になるかもしれない……。
「広海……雪道は慎重にね……」
「はぁ?何言ってんだよ。雪なんて全然降ってないだろ馬鹿が。寝惚けてんのか?」
やっぱりいつも通りだった……。