幼馴染みの期限

……眠れないんだけど。



一時間経っても眠気が訪れる気配もない。酔って泣いて疲れた分はさっきの睡眠で消化してしまったみたいだ。


はぁーとため息をついて身体を起こすと「眠れないのか?」とすぐに声をかけられた。



「起きてたの?」


「さっき起きた」


ふわぁ、と軽く欠伸をしながら広海は窮屈そうに屈めていた身体を起こすように伸びをした。


しなやかな身体をゆっくりと伸ばす。


朝焼けに照らされたその身体は鈍く光り、何とも幻想的に見える。その光景に思わず見とれてしまった。



……やっぱり広海って綺麗。



よくもまぁ呑気に眠れるもんだよね、とさっきまでその背中を睨み付けていたことまで忘れそうになってしまう。



広海は私が突然連れ出されて驚いているとは思っているだろうけど……その前に才加と一緒にいる所を見て動揺してしまった事までは知らない。



広海が思っている以上に私は今の状況に混乱してるって事が伝わらない。それがもどかしい。



「お前は?あんま寝てないだろ?」



「うん。……でも目が冴えちゃった」



「何か眠れない訳でもあったのか?」



……眠れない訳だらけでしょ。


「いきなり拉致されていきなり車に乗せられて行き先も分かんない。これで熟睡しろってほうが無理なんじゃないの?」
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