幼馴染みの期限

「……知ってたんだ」


「何となくだけどな」


「最初はケイが向井だとは思わなかった。でもさLINEに迎えに行くのは恥ずかしいだろうから待ち合わせしようって書いてただろ?お前結構人見知りだし、街コンで会ったばっかりのヤツに家を教える訳がない」



「お前の家がどこか知ってるくらい親しくて、名前が『ケイ』なんて……俺の知ってる限りじゃ向井しかいないだろ」


なんて鋭いんだろう……


「向井くんね、仙台にいたんだけど就職でこっちに戻って来たんだって。宏美さんのお兄さんが市役所で働いてるの知ってるよね?向井くんも同じ課で働いてるの。羽コンって市の主催だったの。それでね、向井くんも偶然そこに居て……」



「……何で主催者側が街コンに混ざってんだよ」


右のまゆ毛を下げながら、広海が棘混じりの声を出す。


……もぅ、何でそんなに怒ってるんだろう。


「怒んないでよ。盛り上げなくちゃいけないから市の職員の人も何人か参加してたんだって。私だって偶然会ってびっくりしたんだから」



「ほんとにびっくりしただけかよ」



「えっ、どういうーー」



どういう意味?そう言いかけた瞬間、右手にふわりと温かい感触が広がった。


広海の両手が、私の手を包み込むように握っていた。



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