幼馴染みの期限
「樹里。お前は今でも向井のことが好きなのか?」
しっかりと私の目を見ながら話しかける、その真剣な表情にドクンと心臓が音を立てた。
好き?
私が向井くんのことを?
今でも?
確かに私は向井くんに告白をされた。
彼の気持ちは疑いようがない。
だけど向井くんを好きなのか?と聞かれたら、分からないとしか言いようがない。
私は……自分の気持ちが分からない。
「……分からないよ」
何もかも分からない。分からないことだらけだ。
自分だって才加がいるくせにこうして私に気持ちを確かめようとしてるでしょ?
そんな広海の気持ちだって、全然分からないんだから。
「分からない……そっか、分からないんだな」
私の言葉を噛み締めるように、広海は繰り返し言った。
「もしお前が過去をちゃんと受け止めて、それでも向井のことが好きだって言うのなら、俺は今このまま引き返そうかと思ってた。でも……分かんないって言うんだったらやっぱり戻れないな」
広海は何を言いたいのか、やっぱり私には分からない。
「なぁ、樹里。俺はお前の誕生日が来たら幼馴染みとして最後にしてあげたいことがあったんだ」
「してあげたいこと?」
「過去と向き合って決着をつけること」
「決着……」
私の混乱を気にすることなく広海は言葉を続けていく。
「そうしないと、お前はいつまで経っても新しい恋に進めない」