幼馴染みの期限
「お前を蔑ろにしたら、アイツに合わせる顔がないからな」
「……アイツって?」
「美桜。俺達は今から美桜に会いに行くんだよ」
「えっ」
美桜にーーーー?
10年前、私達は二人だけの幼馴染みになろうと約束をした。
それから一度だって広海の口から美桜の名前は出る事が無かったのに。
一気に意識が10年前の放課後に引き戻されていく。
あの時……教室の中は夕日に照らされて茜色に染まっていたのに、隅のほうだけは孤独の果てのように真っ黒に見えた。
世界でたった一人になったような哀しみの中、そんな暗闇に落ちて溶けてしまえば少しは楽になれるのかもしれない……そんなことを思った。
孤独の底に落ちかけた私を救い上げてくれたのは広海だった。
抱き締められた時の温かなぬくもりを、今でもはっきりと覚えている。
……覚えているから……だから。
「……広海」
「どうした?」
「無理。会えない」
「何でだよ」
「どうしても、無理だよ。美桜は私の事を許してくれない……そうでしょう?」
私に会いたいなんて、絶対に思ってくれるはずがないんだから。