幼馴染みの期限
向井くんの優しさに触れて、堪えきれなくなった想いは涙に変わって溢れ出した。
突然泣き出した私を見て、向井くんはちょっと困った顔をしながらそれでも落ち着くまで側でずっと待ってくれていた。
泣き止んだ私に向井くんはもう『どうしたの?』とは聞かなかった。
そのかわりにそっと手を繋いできて……そのまま私達は一緒に帰った。
繋いだ手は少しだけ震えていて、向井くんも私と同じようにドキドキしてるのかなって思ったら、何にも言葉が出て来なくなってしまった。
一言の会話も無く、お互い俯いたままで私の家までゆっくりと並んで歩いた。
不細工な泣き顔を見られちゃって恥ずかしかったけど……それでも私はしあわせだった。
手を繋いだ瞬間、私達の気持ちは同じだったって、通じあっていたんだなって分かったから。
その事が嬉しくて、しあわせで……
美桜への罪悪感もすっかり消えてしまっていた。
……いつも約束をしていなくても教室に迎えに来てくれて、一緒に帰っていた美桜が、どうしてこの日だけ私の前に現れなかったのか。
そんな事すらも気がつかないほどに。