幼馴染みの期限

不可思議な事は学校に着いてからも続いた。


「おはよー」


教室に入っていつもと同じように挨拶をした。


その瞬間、教室の空気が変わったようにシンと静まりかえった。


誰からも挨拶が返って来ない。


それだけではない。


男子達は何となくニヤニヤ笑いを浮かべながらこっちを見ているし、女子達は遠巻きに何やらヒソヒソと話をしていて、視線すら合わせてもらえなかった。


居心地の悪さに俯きながら席へと向かい着席すると、隣から刺すような視線を感じた。


「美咲ちゃ……」


どうしたの?と続けて聞くことは、とてもできない雰囲気だった。


彼女の隣には目を真っ赤にして泣きはらした真美ちゃんが座っていて、そんな真美ちゃんを庇うように手を握りながら、美咲ちゃんは私を睨み付けていた。



理由も分からずただ視線だけで責められているような異様な空気の中、私は無意識に向井くんの姿を探してしまっていた。


向井くんはいなかった。


いつも早くから登校している彼が教室に居ないのも珍しいことだった。


予鈴が鳴り担任の崎山先生が教室へと入って来て、そのままホームルームが始まってしまった。



「渡瀬……ちょっと」



ホームルームが終わるとすぐに先生に声を掛けられて、それを見ていたクラスメートがまたひそひそと何かを耳打ちしていた。
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