幼馴染みの期限
言葉を選びながら話す崎山先生とは対照的に、福田先生の質問はストレートだった。
私達は付き合ってはいない。
『付き合っていません』
そう答えるのは簡単だった。けど、それを言ってしまうと向井くんを好きだっていう気持ちまで否定してしまうような気がして言えなかった。
私達は、お互いの気持ちをまだちゃんと伝えあっていない。
そんな大切な気持ちを……何でこんな所で責められるように言わなくちゃいけないの?
思わず視線を向井くんの方へと向ける。目が合うと彼はゆっくりと頷いた。
「……どうして先生方に言わないといけないんですか?」
たぶん、向井くんも私と同じ気持ちだったのだろう。
向井くんは質問に答えなかった。はいともいいえとも言わない私達に、福田先生は深いため息をついた。
「……ある先生が生徒から相談を受けた。その生徒は自分の悪口をクラス中に言いふらされて悩んでいるらしい。放課後にしつこく付きまとわれて、試験勉強もろくにできなかったと言っていた」
急に話が変わって困惑する。
悪口?……相談?話の意味が一つも分からず眉を寄せた私に、福田先生は黒ぶちの眼鏡の端を少しだけ持ち上げながら、意味ありげな視線を私だけにちらりと向けて、さらに話を続けた。