幼馴染みの期限

***

「樹里ー、樹里ー」


階下からお母さんの呼ぶ声が聞こえる。


ベッドに潜ったまま聞こえないふりをして、固く目を閉じた。


トン、トン、トンと階段を上がる音に続いてコン、コン、とドアをノックする音が聞こえる。


「樹里?樹里ー」



「……寝てるのかしらね」





「…………寝てないよ」


呟いた声は廊下までは届かなかったみたいだ。


何度かドアをノックする音が聞こえたけど、やがて諦めたのか、またトン、トンと階段を踏む音が聞こえ、足音は遠ざかっていった。



「寝てるのかしらね、だって」



……眠れるワケがないのに。


早退させられてから、今日で三日が経った。


午前中のうちに帰宅した私を見て、母は驚いていた。


「どうしたの?」聞く母に「具合悪くなっちゃって……」とだけ言って部屋に閉じ籠ったけどすぐに学校から連絡があって、どうやら早退をした事情は母には知られてしまったようだった。


先生は何をどこまで話したのかは分からない。だけど、母はそれから私には何も聞いて来なかった。


その気づかいが、かえって私を苦しめた。



「三日だけ、学校お休みしなさいって」


母にそう言われた後は、三日間をずっと部屋に閉じ籠ったまま過ごした。


今日で三日目。明日は学校に行かなくちゃいけない。


眠ったらそれだけ学校に行く時間が近づく。


不安で仕方ない。……だから、



「……眠りたくないよ」


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