幼馴染みの期限
〈2日前〉別れ
***
「樹里ー、そろそろ支度しないと間に合わないわよ」
階下から母の呼ぶ声が聞こえた。
そんな事、言われなくても分かってる。
昨日はほとんど眠れなかったし、朝日が昇る前から起きてるんだから。
だけど……もうそろそろ家を出なければいけない時間になろうとしているのに、パジャマ姿の私はベッドに腰かけたまま動くことができなかった。
『制服に着替えて学校へ行く』
その事を考えただけで指が震える。胃の奥がムカムカとして、込み上げてくるものがあった。
この三日まともな物を口にしていなかった身体は力が入らず、気を抜いてしまうと簡単にベッドに吸い込まれそうになってしまう。
……やっぱり行くの止めようかな。
弱気な心に支配されそうになった瞬間、ダダダダッと階段を勢いよく駆け上がって来る音がした。
驚く間もなくその音はあっという間に部屋の前まで続き、ノックも無しで部屋のドアが勢いよくバンッと開いた。
「樹里、行くぞ」
そう言った広海の姿が、ランドセルを背負って毎日のように迎えに来てくれた幼い頃のそれと重なって見えた。