幼馴染みの期限
『じゅりちゃん、がっこういこう!』
今みたいに背も高くなくてちっちゃくて、女の子みたいに可愛くて性格もおとなしかった広海は、幼稚園の頃からよくいじめられていた。
とうとう『……がっこう……いきたくないぃぃぃ』と、情けない声で泣き出した広海を迎えに来て欲しいとママさんから頼まれたのは、小学校に入ってすぐのことだった。
『じゅりのおへやまでむかえにきたら、ひろみといっしょにがっこういってあげる』
偉そうにそんな事を言ったのは、私が迎えに行くよりも『私を迎えに行く』って役割があったほうが学校に行きやすいんじゃないかと子ども心に思ったからだった。
「……何だか懐かしいね」
いつも私の後ろに隠れていた広海は私なんかよりもずっと大きく、ずーっと偉そうになって、階段を駆け上がる音も昔よりだいぶ力強くなった。
あの頃と今は何もかも違うのに、何だか泣き出しそうなほど全てが懐かしく感じた。
「ははっ、だよな。俺が早く迎えに来ただけなのに、お前全然着替えてなかったから、よく里子かーさんに怒られてたよな」
確かにそうだった。昔を思い出して思わずクスッと笑うと、「笑う元気があるなら大丈夫だな」と同じように笑われた。
……うん。大丈夫。
さっきまでベッドに沈みかけていた身体はしっかりと二本の足で床を掴んで立ち上がり、指の震えもぴたりと治まっていた。