幼馴染みの期限
だけどそう言った私に、才加がにっこりと笑いながら言った。
「樹里。私『付き合ってる人』はいないって言ったけど、今まで『何もなかった』訳じゃないよ?」
「……えっ?」
じゃあ今まで『何もなかった』のは…………私だけ?
才加の方を見たままで固まってしまった顔をそろそろと前に戻すと、広海はちょっとだけばつの悪そうな顔をして目をそらした。
「まぁ……俺もそれなりに。お前も知ってるだろ?」
まぁ、でも確かによく考えたら私よりもはるかにモテる二人に今まで何も無かったってほうが無理があるか。
未だに実家暮らしの広海の家はうちの向かいだ。今まで何度も広海を訪ねて来たっぽい女を見かけたことがあった。
…………全員巨乳だったな、と余計な事まで思い出してしまった。
話がずれた。戻そう。
……ということは、二人は私の全く前進のない恋の話題に今まで呆れながらも付き合ってくれていたんだな。
「まぁ、お前もそれなりに頑張れば?」
軽く落ち込んだ私の肩を広海がポンポンと叩いた。
幼馴染みに同情されることほど悲しいことはない。
がっくりと項垂れながら、氷がすっかり溶けきってぬるくなった梅酒ソーダを喉に流し込んだ。
とにかく今の私に必要なものは『落ち着き』と『頑張り』なんじゃないかって事だけは分かった。