幼馴染みの期限

「樹里、帰るぞ」


放課後の時間になると、また広海は当たり前のように教室に現れた。


中学に入ってからこんなに広海と一緒にいたことは無かった。


孤立した私を庇ってくれているのは嬉しかった。


だけど美桜や……向井くんじゃなくて、広海がその役目をかってくれた事が不思議で仕方ない。


美桜は朝と同じく全く姿を見る事ができなくて、向井くんは今日も休んでいた。


いきなりどうして広海が来たの?と思うのと同時に、広海の彼女の顔も頭に浮かんできた。



ただ幼なじみというだけで、中学からは何も接点の無かった私をわさわざ呼び出してまで近づくなと言ってきた彼女の事だから……今のこの状況には間違いなく怒っているんじゃないのかな……。



「……あの、広海。ちょっと待って」



私の分まで鞄を持って歩いて行こうとした広海を呼び止めたはずだった。


だけど、広海はちらりとこちらを振り返っただけで「ほら、行くぞ」とさっさと歩いて行ってしまった。


何度呼び掛けても、ちょっと会話をしただけでまたスタスタと歩いて行ってしまう。


「お前さ、顔色最悪」


「……えっ?何?聞こえないよ。ねぇ、広海」


広海のスラリとした長い脚でさっさと歩かれると、追い付こうとするだけで息が切れ切れになってしまう。


「顔色が悪いって言ったんだよ。どうせ休んでる間ロクなもん食って無かったんだろ?」


「はぁ、はぁ……ねぇ、広海ってば」


身体の事を気遣ってくれるなら、まずその足を止めて欲しいのに。


「今日は何もしないで、家でゆっくり寝てろ」



「っ……もう!ちょっと待って!!」

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