幼馴染みの期限
……何かおかしい。
広海は私を守ってくれているようで、何かから私を遠ざけているみたい。
じゃあ、何から?
「ねぇ、ひろ……」
「樹里。今は余計な事考えんな。しばらくは朝も帰りも一緒にいるから」
私が何となく考えている事も、聞きたい事も広海には分かっているみたいで、そのまま言葉を遮られてしまった。
「じゃあ、また明日」
ポンポン、と朝と同じように頭を撫でられる。
広海は私が玄関に入って部屋に入るのを見届けるように、少しだけ時間を置いてから自分の家へと戻って行った。
その様子を、私も同じように部屋のカーテンの隙間からこっそりと見ていた。
広海の姿が消えたのを見届けてから、脱皮をするようにその場にコートを脱ぎ落としてベッドへ腰かけた。
自然と、そのまま吸い込まれるようにパタンと身体が横に倒れていく。
ずっと気を張っていたから、何かの糸が切れたみたいだった。
……広海が言っていたように、たぶん私は凄く疲れてるんだろうな。
足をベッドの下に下ろしたままで横になっている。相当不自然な格好だけど、足をベッドに上げることすら面倒だった。
ぼんやりと、今日一日の事を自然に思い返していた。
広海が優しいこと。
先生が私を心配そうに見ていたこと。
向井くんが休んでいたこと。
クラスのみんなの視線が一斉に向けられたけど、あまり敵意は感じなかったこと。
真美ちゃんと美咲ちゃんが私に何か言いかけて……広海に睨まれて黙ってしまったこと。
……美桜に会えなかったこと。