幼馴染みの期限

最初に美桜の気持ちを無視したのは私だ。

だから、何を言われても仕方ないと思った。


先生も広海も私と向井くんがどんな噂になってるのかは教えてくれなかった。


けど、ニヤニヤ笑いに好奇の目、敵意が混じった視線が向けられた事を考えると、たぶん酷い内容なんだってのはバカでも分かる。


美桜が怒るのも当然じゃないかって。


だから噂は誤解だって。でも、実は私も向井くんの事が好きだったんだって、そこだけは嘘じゃないんだってちゃんと言おう。そう思って電話したんだから。



ギュッと携帯を握りしめて、美桜の返事を待つ。


だけどしばらく待ったのに、向こうからは何も返事が返って来なかった。



「………美桜?」


電話が切れた様子も無い。


無言の電話口に向かって、思わず呼び掛けた。



「……ふっ。ふふっ」


「ははっ……はっ。あはははははははははははは!!」



いきなり大声で美桜が笑い出した。


その弾かれたような壊れてしまったような笑い方を聞いて、全身にゾクッと鳥肌が立った。
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